備前焼とは
窯焚きが生み出す 土と炎の芸術 多彩な色と表情を作り出す備前焼の「窯焚き」。
 備前焼のスタイルは、備前の土を、釉薬をかけずに高温で長時間焼き締めることで生まれる土味の力強さと、窯の中で自然に変化し、画一的でなく千差万別で多彩な色や表情、そしてそれらを生かした味わい深い造形の妙であると言われている。
 釉薬や絵付けを施さない備前焼の肌に現れる色彩は「土と炎の芸術」といわれる、焼き物の中でもとても個性をはなっており、どれひとつとして同じものはない。
 土と炎と灰の自然な力、窯の中での偶然性をいかにうまくとらえるか。備前焼の作家は、土の持味、窯の中の炎の流れ、灰の動きなどを知り尽くし、これら自然の力を読み取り、意図的に窯へ詰めていき絵を描くのである。
窯の中で描かれる炎の足跡 備前焼は、土を水でこねて形を作り、窯に入れて焚き木を燃やし、ゆっくり時間をかけて焼き上げる。
 備前焼の窯焚きは十日から二週間。他のやきものの倍以上かかる。それは備前の土の性質にある。備前の土は粘りは強いが火に弱く収縮率が大きいので、焚き火を燃やし、ゆっくり時間をかけて焼き上げるのである。
 備前焼で窯焚きに使うのは、昔から赤松の割り木である。燃えにくい太い薪でじわじわとゆっくりと焚いていき、最後は細い薪を使う。この長い時間が、焼き上がりの多彩な文様を生み出す。
 そして焼き上がったら、窯の口を山土で固めて密封し焼いた期間と同じだけの期間をかけて窯をさまして、窯出しする。窯から取り出された作品はひとつひとつ灰を洗い落とすと、なんの変哲もなかった焼く前の素地とはうって変わって、黒い焦げ色や青灰色、褐色から緋色まで、さまざまな色調の肌があらわれる。炎の当たりの違いが生み出す「窯変」は、力強くもやわらかな備前焼の景色となり、土に焼き物の生命を吹き込んだ火の不思議な力をしみじみと感じさせる。
千年の歴史を継ぐ備前